GAYA | Blog

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サンガネールへの道(2)


染職人によると、ヤギの糞が一番いいとか、ラクダの糞が一番いいとか色んな意見があるそうですが、一般的には牛糞が広く使われていました。そして、その糞は新鮮であればあるほどいいのだそうです。


<工程>

1、未晒しの生地を一晩水に漬ける。

2、よく洗い絞る。

3、新鮮な牛糞を2〜3倍の水で溶く。そしてその液に満遍なく浸し、軽く絞る。一晩置く。

4、次の晴天の日に川で水洗いをする。

5、平らな地面に広げて干すが、常に湿った状態を保つ。乾かないように何度も水を振りかけ、陽の高い間中、強い光に晒す。

6、陽が傾いたら布を水洗いする。絞った後にまた牛糞液に浸し、ひと晩置く。


この工程を、布が純白になるまで4、5日繰り返します。


今はもうこの牛糞を使った漂白方法は(残念ながら?)使われていませんが、美しいデザインの木版捺染は今も確かに受け継がれ、サンガネール独特の爽やかな仕上がりの染めは健在です。


今回もいつも行く家族のような染め職人、スラジさんの家で数日を過ごしました。


スラジの家は、子供の頃から通っている、自分の家のような居心地の良い場所です。


飼っている水牛から絞ったミルクに少しスパイスと砂糖を入れて「これさえ飲めば身体は健康!」と言っては、毎朝毎晩、愛情たっぷりのホットミルクを出してくれます。


スラジは私のことを娘同様に思って、いつも心配してくれます。そして、ある日、スラジに予め日本から連絡をとっていたサンガネールの工房の話をし、この染め場を訪ねてみたいと話すと、私の行きたいと言っていたその工房の夫婦は、なんとスラジととても古くからの知り合いだと言うことがわかりました。


家族ぐるみのお付き合いをし、お互いの工房の近くまで来ると、家庭料理をご馳走し合う仲だと言うのです!スラジはその場ですぐに電話をかけてくれ、日本からきた古い友人を連れて行くからと話してくれました。そして、数日後、スラジの家の車でサンガネールまで連れて行ってもらうことになりました。


到着してみると、同じ染職人の家とはいえ、スラジの家とはまるで違う大きな洋館に入ると、中は空が見える高い吹き抜けになっており、建物中に明るい日の光が差し込んでいました。


壁にはセンスのいいアンティークのピチュワイ画や、大航海時代に広く世界と交易していた名残でしょうか、色あせた世界地図が飾られていました。


いつも行く他のインドの片田舎の染め職人の家では、大体が床で商談するのに、ここは立派な重厚感のあるテーブルと椅子だし、商談中に部屋に入ってきた他の従業員との会話が全て英語だったことにも、たいそう驚かせれました。村人相手ではなく、マハラジャや東インド会社相手に商いをしてきたサンガネールの歴史とプライドを感じました。


ひととおりデザインと色、注文数を決め終えると、一切口を挟まず見守りながらも、かつ私がどんな柄を選ぶかつぶさに見ていたスラジが、「アキコジー、アウトラインはもっと濃い色にした方が、デザインが締まるよ」と最後にひとつだけとアドバイスをしてくれました。


なるほど。さすが同じ木版染の職人のアドバイスには説得力がある。スラジのアドバイス通り、見本よりもアウトラインはもう少し濃い色にしてほしいとお願いし、工房のさりげなく飾られた興味を惹かれる調度品を目に焼き付けながらスラジと工房を後にしました。


出来上がるのは4ヶ月後の予定です。


さあ、どんな仕上がりになるのでしょう。期待を胸に抱いて帰路に着きました。


(つづく)


※写真は煮染めの時に燃料として使う牛の糞を天日干ししているところです。

このように牛の糞は漂白に使用する以外にも、生活のあらゆる場面に活かされています。


〈参考文献〉
西岡由利子 著『印度木版更紗ー村むらに伝わる』(アナンダ出版工房 刊)
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